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毛深いとハゲるのは本当?

すね毛

薄毛に関するうわさの中には信ぴょう性の薄いものもありますが、絶対にウソとは言い切れない噂もいくつかあります。すね毛や胸毛など、体毛が濃い男性は頭が薄くなりやすいという噂もその一つです。

昔の人がこのような話をしだしたのは、経験上その確率が高いからでしょうし、全くのウソとは言い切れない側面もあります。今回は体毛の毛深さと薄毛の関係について掘り下げて見ていきます。


毛深いとハゲるといわれる理由

男性ホルモン

まず、毛深いと薄毛になるとされる所以を考えてみましょう。この噂は数十年以上前の相当昔からありましたが、昔はまだ薄毛の正確な原因や機序は十分に解明されていませんでした。

ただ、男性ホルモンが多いと薄毛になりやすいということは段々と分かってきましたので、例えば性欲の強い男性は薄毛になりやすいというような噂も昔から存在していました。

同じ理由で、男性ホルモンの強さを示す体毛の濃さが、薄毛と結びつけられたのではないかと考えられます。確かに、男性ホルモン(テストステロン)はすね毛や胸毛などの体毛を濃くする作用があるので、体毛が濃い=男性ホルモンが多い=薄毛になるという構図になることは理解できます。

ただ、薄毛の発生のメカニズムがほぼ解明された現代では、上記の構図はそのままでは正確でないことが分かっています。


薄毛に影響する男性ホルモンは種類が違う

男性は筋肉を発達させたり生殖機能を維持するために、元々テストステロンが多く作られています。しかしこの男性ホルモンは頭髪の薄毛を引き起こす作用はありません。

頭髪を薄くするのは、同じ男性ホルモンでもジヒドロテストステロン(DHT)という別の種類になります。現在はこの事実が分かっているので、体毛が濃い=薄毛になるという直接的な話題はあまり聞かれなくなっています。

ただ噂が完全に消えたわけでもありません。これは、テストステロンが多いことと薄毛のリスクについて、全く関係ないとは言い切れないからです。

微妙な言い回しになってしまいますが、テストステロンの多さが直接薄毛のリスクにはならないとしても、将来的に影響が出る可能性があるのです。この点を次の項で見てみます。


DHTはテストステロンから作られる

薄毛の原因になるDHTは、実はテストステロンが変化したもので、元々は同じ種類の男性ホルモンです。テストステロンが活性度を上げたものがDHTという風に考えて頂ければOKです。

なぜテストステロンがDHTに変化するのかは詳しくは分かっていませんが、加齢に伴ってテストステロンの分泌量が減ってくることに対して、これを補おうとする体の反応なのではないかという考えもあります。

いずれにしても、DHTは男性の場合思春期以降に徐々に生産量が増えてくるとされていますが、この過程には体内酵素の5αリダクターゼが深く関わっています。

この酵素の働きがあるために、テストステロンがDHTに変えられ、薄毛を引き起こすことが分かっています。ということは、元々テストステロンの量が多ければ、それだけDHTの生産量も増えるのでは?と考えることもできます。

単純に考えれば、テストステロンが多い=DHTの量も多くなる=薄毛になるという構図が作られます。ただ、実際にはこれほど単純ではありません。


遺伝や個人差の関与もある

前項で出てきた5αリダクターゼという酵素は人によってその活性度が違います。活性の強さは遺伝も影響するとされており、個人差も大きいのです。

活性が強ければそれだけ多くDHTが作られますが、弱ければテストステロンの量が多くてもDHTの生産量は多くならないでしょう。

また薄毛の発生と進行にはDHTに対する感受性の問題もあります。DHTは脱毛信号を発して薄毛症状を進めていきますが、その信号を受け取る毛根のレセプター(受容体)の感度も薄毛の進行に影響します。レセプターの感受性が強ければ脱毛信号によく反応して薄毛を加速させますが、感度が弱ければDHTの量が多くても薄毛にはなりにくくなります。

このレセプターの感度も遺伝が関係するとされています。このように、仮にDHTの基になるテストステロンの分泌量が多くても、必ずしも薄毛に直結するとは限らないのです。


DHTが増えても対処は可能

薬

薄毛の研究が進んだ現代では、DHTの生成を効果的に抑制する治療薬が開発されています。ですから仮にテストステロンが多く体毛が濃い人が薄毛になってしまったとしても、これに対処することができるようになっています。

薄毛の治療は早く始めるほど効率的な対処が可能ですので、心配な方は早めの相談をお勧めします。


まとめ:毛深さと薄毛のリスクは全く無関係とはいえない

今回は体毛の濃さと薄毛の関係を見てきましたが、薄毛の原因となるDHTがどのように作られるのかを知ると、体毛の濃さが薄毛と全く無関係ではないことが分かります。

だからと言って個体差もあることから必ず薄毛になるとも言い切れないので、薄毛リスクが若干上がるのかな、という程度で捉えておけばよいかと思います。もし20代、30代など若い時期から抜け毛が増えてきて心配だという方も嘆く必要はありません。

当院では若い世代の方も大勢治療に通われています。私たちと一緒に元気な髪を取り戻していきましょう。